100年に一度の変革期と言われる中、次世代のクルマの姿を再定義したのが「日産 アリア」です。

「日産アリア」を生み出したマイスターたち

シニアデザインダイレクター
ジオバーニ アローバ

エンジニアリング・モンスターでは、「ニッサン インテリジェント モビリティ」の象徴として日産の技術の粋を集めた「日産 アリア」の開発に携わったエンジニア達のインタビューから、このクルマに込めたエンジニアとしてのこだわり、革新的な技術を生み出した開発の裏側、そして「日産 アリア」に息づく日産のDNAをオリジナルコンテンツとしてお届けしていきます。

今回は、「日産 アリア」のデザインを陣頭指揮したジオバーニ アローバが、プレミアムEVに込めた想いを語ります。

ジオバーニ アローバ

シニアデザインダイレクター

デザインチームは、オーケストラのよう

電動化されたプレミアムSUVに搭載する技術をどうデザインに反映するか。
まずは"デザイナー同士が認識を共有するための言葉"を模索することから私たちの仕事はスタートしました。
さまざまな言葉を模索し、電動化による新しいテクノロジー、クリーンでパワフルなエネルギーという、デザインの"鍵"となるものに辿り着きました。

デザインチームとは、オーケストラに似ています。
キーワードが見つかると、エクステリア、インテリア、カラー、UI/UXなど、各デザイナーたちは共通認識をもって自分たちの音を奏で始めます。
やがてその音が一つになり、「日産 アリア」の姿が浮かび上がってきました。

「日産 アリア」で象徴的なのがフロント中央にある大きなグリルです。
ピュアEVは冷却機能としてのグリルは必要ありませんが、ソナーを発する機能を与えるためにグリルが必要となりました。

そこで、厚いアクリルの裏側に塗装を施すことでソナーの波がアクリルを通過できるようにしています。
また、裏側を塗装し前側はクリアにしたことで、クリーンでユニークな美観を与えることができました。

「日産 アリア」のインテリアは、とてもシンプルな空間です。
我々は先進技術をどうデザインに反映し、間(ま)をどのように作っていくかに注力しました。
そしてインパネ上部にある2つのスクリーンは、リアルとデジタル、「日産 アリア」の内と外をつなぐコネクティビティ(接点)です。
我々はここを"縁側"と呼んでいます。

日本ならではの美意識を電動化されたクロスオーバーに取り入れる

カーデザイナーという仕事を知る前は建築家に憧れていて、その頃から日本の美意識に注目していました。

お城から一般家屋まで、日本の建造物はとてもクリーンです。
室内は畳を中心に構成されていて、一見すると他に何もないように感じますが、よく見ると格子や障子が側面から空間のバランスを見事に調和させています。

我々のチームはある段階で「日産 アリア」にピュアでクリーンな形を与えることに成功していました。
しかし私は、今の状態はクリーンすぎると感じていました。
まだ何かが足りない。
もっと引き込まれるような美しさ、シンプルさと美のバランスが必要だと思ったのです。

そんな時、ふと日本の伝統的なモチーフを取り入れるというアイデアが降りてきました。
日本の家屋が持つ美しさは、電動化されたクロスオーバーモデルとの親和性が高いはずだ。
私は、「これを表現するのは今しかない」と確信しました。

私は「日産 アリア」を定型的な捉え方で構築したくないと考えていました。
今、自動車業界には100年に一度と言われるパラダイムシフトが起こっています。
だからこそ「日産 アリア」で次世代のクルマの姿を再定義しよう。
我々デザイナーは、そう考えて仕事に取り組んだのです。

美しい技術がまとうスーツは、美しくあるべき

私はカーデザインをテクノロジーに対する最初のタッチポイントと捉えています。
一つのクルマを作り上げるためには、パッケージ、技術、空力、そして法規など、さまざまな要件のバランスを取らなければなりません。
「日産 アリア」が完成するまで、私は福田チーフ・プロダクト・スペシャリストや中嶋チーフ・ビークル・エンジニアと何度も話し合いました。時には激しく言い合うこともありましたね。
でもそれは喧嘩ではなく、パーフェクトなバランスを達成するためのポジティブなテンションです。

「日産 アリア」は次世代のプレミアムEVであるだけでなく、日産というブランドの将来を定義するもの。
チーム全員がこの想いを共有していたからこそ、限界に挑み、それぞれが持つ匠の技を生かすことができたのだと思います。

技術とはとても美しい。
だからこそ、その技術がまとうスーツも美しくあるべき。
私は常々このように考えています。
だからこそお客様には、デザインを通して新しい経験をお届けしていきたいですね。

GT-RやフェアレディZなど、日産のDNAは非常に豊かです。
「日産 アリア」も、日産のDNAが宿った電気自動車に仕上がったと自負しています。

クルマは動いてこそ魅力がある。早くその姿をお届けしたい

クルマというプロダクトは動いてこそ魅力があるもの。
人々にとって特別な存在になるのは走っている時だと思います。
今はまだ静止している姿しかお見せできませんが、早く「日産 アリア」が走っている光景をお届けしたい。
そんな気持ちでいっぱいです。
それまでは、全てのアングル、遠くからも近くからも見て、「日産 アリア」の引き込まれるようなプロポーションを感じていただきたいです。

「日産 アリア」は、都市とのハーモニーが取れたプレミアムEVであると同時に、自然とも調和するモデルです。
私が「日産 アリア」でドライブするなら、横浜から京都に向かい日本的な情景を楽しんだ後、神戸から明石海峡大橋を渡る雄大な風景の中をダイナミックに走らせてみたいですね。