【にっちゃんレポート】
DATSUN フェアレディ240Z
再生プロジェクト VOL.3

半年以上かけて進めてきた「DATSUN フェアレディ240Z」のレストア(再生)活動もいよいよ後半戦。
2013年12月1日(日)に開かれるNISMO FESTIVALに向けて、クラブメンバーたちの活動も大詰めです。
約40年の時を超えてよみがえる、当時「世界最速」と呼ばれたクルマ。その勇姿に乞うご期待!

後半戦開始の合図は、メンバー皆で磨き上げ

初夏のシーズンから始まった作業は、まずボディや各パーツを磨くところから。作業場内で240Zのボディ本体を磨き上げるチーム、エンジンをバラして洗浄と各種測定を行うチーム、マフラーなどの部品をクリーニングして再塗装するチームなど、それぞれが各リーダーを中心にテキパキと作業をこなしていきます。

名車再生クラブの特徴のひとつが、実はここにもありました。
それは、「リーダーの指示に従って作業を進める」のではなく、「自分たちで何をするべきかを考え、ときにリーダーがそれをヘルプ」するメンバー主体の作業ということ。メンバー皆がクルマに触りたいから、ベテランメンバーほどサポート役に回って、新規メンバーが積極的に作業に参加できるよう、心がけているそうです。

当時を思いながら、ひとつひとつの部品を磨き上げていく:吉浪

クラブへの参加のきっかけは、クルマいじりとヘリテージカーが好きだったこと。5年程前に参加し、今は妻も一緒に活動してます。メンバーには「走る、曲がる、止まる」の基本性能に強い人が多いなか、補機や部品磨きの得意な人が少なかったので、バイク磨きの経験を活かして担当するようになりました。当時の雰囲気や姿を思い描きながら、汚れて錆びた部品をひとつずつ復元しています。
本業は空調開発なので、レストア車の空調部分も仲間と一緒に復元してます。今までレストアしたラリーカーはすべてヒーターが効くんですよ。また富士号・桜号の羅針盤復元も、世界が広がった深い思い出です。240Zは当時の走り、音だけでなく、走り抜けたアフリカで人々に与えた感動も復元したいと思っています。

ときには当時の状態のまま、ときには当時の状態に再現を

一般的にクルマをレストアする場合はボディの塗装なども塗り替えますが、名車再生クラブでは当時の状態を残すことが基本。今回も塗装の傷み具合と当時の塗装や傷をそのまま活かすために、外観はクリーニングのみにとどめています。そのため、レースによる傷やボディの凹みなども当時のまま。しかし、凹んだままだと、ゼッケンを貼り付けする際にキレイにいかないのが難点。同じ素材のものを使って、ゼッケンがちゃんと貼り付くかを入念にテストして進めていました。

また、別の場所ではエンジンの冷却装置を何時間も磨いているメンバーが。実は240Zが以前レストアされたときに塗装されていたため、それを落としているとのこと。「ボンネットを開けたときも、当時のままの見た目にしたい」と、今回のレストアの目標である『ゴール当時の再現』にこだわった作業も様々な場所で行われていました。

エンジン部門のリーダー:河合

今回はエンジンがノーマルに変わっていたため、いかに当時の仕様を再現させるかがテーマでした。圧縮比とカム作動角の情報はあったので、その仕様に合わせ、残りは当時のチューンナップマニュアル等を参考にしました。
メンバーにはエンジンにかかわらない部署の方もいますが、部品を計測したり、削ったり、磨いたりと、チューニング作業を通じてエンジンを学ぶ良い機会になったと思います。エンジンは毎回、必ず全分解してからスタートしていますが、今回はL型エンジンなので部品も情報も豊富。例年より、やりやすかったです。
組んだエンジンがキチンと回ること。当時の性能を発揮できること。どちらも当たり前のことですが、そこを念頭に置いて取り組んでいます。

ボディにも、さまざまなトリビアが

下の写真はもともとあったステッカーやペイント文字を紙に転写しているところ。車体磨きのために剥がしたステッカーやペイント文字を再び元の状態に戻せるように、さらにどこが損傷していたり汚れていたりしていたのかも記録して、新しいステッカーなどにも同じ損傷や汚れを再現しています。
このステッカーにも、色やラインの太さ、角度など、年度ごとに細かな違いがあるんだとか。今回の取材中に論争を巻き起こしていたのが、再生したステッカーにあるラインの色。ラリー時でのゴール写真がモノクロだったため、メンバー間でも正確な情報がなく、激論になったそうです。

また、テールランプにも隠れたトリビアが。
ランプ部分をよく見ると「SAE」の文字が。これは米国自動車技術会の略で、アメリカの車検に通っていることを表しています。同様に、「自」マークは日本の車検を通っている証。240Zは国内外両方の車検を通っていることが、ここを見るとわかります。

そして、極めつけが、クルマの屋根の凹み。これ、何故凹んでいるのか分かりますか。
実はゴール時にドライバーが屋根に乗って喜んで跳ねたのが原因ではないかとのこと。こういった部分は直さず、当時の感動もそのまま残しています。
NISMO FESTIVALで実車を見た方は、ぜひ屋根の部分も注目してみてください。

次はラストの第4回目。ついに、240Zが走ります!

コラム:過去のレストア車紹介

[2008年再生]
サニーエクセレントクーペ(KPB110)

1973年の日本グランプリ優勝車。レストアを開始したところ、実はエンジンの中身が入っていないという、予想外の事態が発生。メンバー皆でとてつもない苦労をして当時のエンジンを探しだした、思い出深い1台。
ECGI(電子制御式ガソリン噴射装置)のコントロールについては、柿本さんのノートを参考に手探り状態で作り上げました。今思うと、いろいろな部分をメンバー同士で悩んで作り上げていました。
完成後、開発当時の担当者の方が感激して、打ち上げ代を出してくれたのも忘れられません。

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関連ページ : ヘリテージカー