ゼロから作り上げ、
新しい一歩を踏み出す
「キックスを、ゼロから生まれ変わらせる」
フルモデルチェンジにあたって、開発チームはそう決意した。新型キックスがお客さまのもとへ届けられる数年前、プロジェクト始動時の出来事である。
開発チームは当初から、コンパクトSUVセグメントに革新を起こす覚悟で臨んだ。従来の親しみやすさは受け継ぎつつも、それ以外はすべて見直し、ゼロから作り上げる。そのビジョンのもと、プロジェクトは最初の一歩を踏み出した。
1枚のデザインスケッチの
衝撃
フルモデルチェンジは、デザインコンペティション形式で進められた。世界各国で活躍する日産のデザイナーたちが想像と創造を競い合い、最も画期的なアイデアが選出される形式だ。
Exterior Designerの田中は「“タフ”というキーワードをベースに、日本、アメリカ、ヨーロッパなどのデザイナーがイメージを膨らませていきました。集まったアイデアはどれもユニークなものでした」と振り返る。しかし、それらは唯一無二の個性を本当に打ち出せているか。検証と議論が続いた。
そんな折、アメリカチームが提出した1枚のデザインスケッチに衝撃が走る。そこに描かれていたのは、アメリカンフットボールのヘルメットに着想を得たエクステリアだった――。
既成の枠にとらわれない
アイデア
アメリカチームのデザインスケッチはコンペ終盤に追加され、“ダークホース案”と呼ばれる有力候補となった。田中は「ひと目見ただけでタフさとプロテクト感が伝わり、アメリカならではの発想に魅了された」と振り返る。
Program Design Directorの楠は、その自由な発想に日産らしさを見出した。「日産はこれまで、他の何にも似ていないクルマやカテゴリーを生み出してきました。それこそが日産の強みです。新型キックスにおいても、既成の枠にとらわれず、自分たちが心の底からほしいクルマを作り上げようと話し合っていました。それを具現化したのがアメリカチームの案だったのです」。
遊び心のために
「ここまでやる」
キックスという車名はスニーカーの躍動感に由来する。田中は「スニーカーの俊敏に駆けるイメージを具現化するために、ソールのデザインから着想を得たディンプルパターンを取り入れました」と言う。新型キックスの遊び心を象徴するディテールだ。
ディンプルパターンは平面ではなく、僅かなくぼみ(=ディンプル)がある。それによって美しい光の陰影が生じるのだが、技術的なハードルの高さは前例のないものだった。
デジタルシミュレーションによる反射の検証、クレイモデルでの形状再現、熟練の職人による金型の仕上げ、機械加工の調整など、工程は複雑にして煩雑。想像を超える大変な作業に、関係者は難色を示した。それでも「やる価値がある」と信じ、それを周囲に熱く語り、説得した。その結果、「ここまでやるクルマは滅多にない」と言い切れる情熱が、新型キックスに刻み込まれた。
グレード別設定
美しさのために、
一切の妥協を許さない
新型キックスのボディに映し出される、美しい景色。その景色には歪みがほとんどない。通常ではあり得ないことだ。一般的に、クルマはバンパーやフェンダー、ドアなど、複数のプレス成型パネルを継ぎ合わせて作られる。成型や組み立ての過程でパネルの面やフチにわずかな歪みが生じるのは避けられず、映り込む景色の歪みにつながる。
一方、新型キックスは成形時の歪みが補正されるよう、金型形状や成形条件を手作業で調整した。コンマ数ミリの歪みを打ち消すために、検証を繰り返した。
技術のハードルは高い。しかし、追い求めた。なぜか?車体のリフレクションが美しいから。アメリカンフットボールのヘルメットの継ぎ目がない強い塊感を現したいから。そのディテールに、開発チームの揺るぎない情熱がほとばしっている。











