4WDが追加された新型キックスの走破性を、ワインディングで! オフロードで! スケートリンクで!? 試した
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スタイリッシュさはそのままに中身が劇的進化
新型「エクストレイル」の発売が話題の日産だけど、実はコッチもしっかり進化しているからレポートしたい。コンパクトなボディサイズが人気のSUV「キックス」だ。
2022年7月19日に発売されたばかりのマイナーチェンジモデルは、待望の4WDの追加に加えて「e-POWER」の改良、そしてインテリアの質感向上がなされている。さらにLEDリヤコンビネーションランプ一体型のバックドアフィニッシャーを採用した「スタイルエディション」の追加もあり、ますます魅力的に進化しているのだ。
まずはエクステリアから見てみよう。マイナーチェンジでは、先述のスタイルエディションを除き変更はほとんどないが、改めて見てみるとマニッシュで勇ましい印象だ。キュッと切れ長の大きなヘッドライトに加えて、日産の先進モデルに採用されるグリルデザイン“Vモーション”をまとい(最近のVモーションの中でもキックスのそれは最大のものとなる)、存在感の強いフロントフェイスを作り上げている。
サイドを眺めると、しっかりと腰高なSUVスタイルではあるものの、ルーフがリアエンドに向かって傾斜するクーペ形状を採っており実用性と都会的なスタイリッシュさを両立。若々しく躍動感に溢れたイメージを与えてくれる。ちなみに、これほどまでにルーフを絞った形状ながらも荷室容量はかなり余裕があるということも書き添えておきたい。
続いて今回のマイナーチェンジで大幅に質感が上がったインテリア。ダッシュボードにはステッチが入ったレザー調素材が奢られ上質感がある。また、センターコンソールのデザインが一新され、運転席と助手席の間を貫くように大型のユニットが置かれている。
これにより、運転席と助手席が独立することでコックピット感が強くなり、座った瞬間に走りを期待させるような演出がなされたように感じる。コンソールの両サイドにはレザー調パッドがあしらわれ、こちらも見るからに質感が上がっている。
このコンソールの中でひときわ存在感を示すのが新しいデザインのシフトセレクター。これは「ノート」や「ノートオーラ」、また「サクラ」やエクストレイルといった、日産の最新世代モデルと同じタイプで、デザイン的にもスッキリと美しいのはもちろん、使い勝手も軽くて上々。なにより、第2世代へと進化したe-POWERの存在を強く感じさせてくれて嬉しくなる。
さて、その第2世代e-POWERだが、具体的にはノートやノートオーラと並ぶ最新の電動パワートレインだ。エンジンがかかりにくい制御に改められ静粛性と制振性を高めたという。
今回はこの新型キックスの魅力を徹底的にチェックすべく、新たに追加された4WDモデルを3つのシーンで試乗してみることにした。まずは郊外へのショートトリップ、そして未舗装路のオフロード、そして最後はスケートリンク! さあ、その結果は如何に⁉
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パワフル&意のままのコーナリングで走りが楽しい
ワインディングでは、第2世代に進化したe-POWERのパワフルさが光った。
e-POWERはガソリンエンジンを発電機として使用し、発電した電気でモーターを動かすというシステム上、元よりモーター由来の走り出しの良さが自慢だ。つまり初期からシャキッと加速が立ち上がるのが魅力のパワートレインと言える。
第2世代に進化したe-POWERは、先代よりもさらにパワフルな走りを見せてくれた。先代比+5kW/+20Nmのトルクが登坂車線でも効果的に発揮される。アクセル開度の変化が生まれやすいコーナリング中盤でも、踏めばしっかりと瞬時にトルクが立ち上がるので、加速の谷間がないままにコーナーを駆け上がれるのはかなり気持ちいい。
また、この俊敏な走りをさらに盛り上げてくれるのが、アクセルだけで加減速をコントロールできるワンペダル感覚の走行フィールだ。キックスでは、ドライブモードを「スポーツ」に設定するとより強く回生ブレーキが働くので、ワンペダル感覚のキビキビとした走りをより一層楽しめる。
アクセルペダルひとつで加減速が行える操作感はまさに、新感覚のワクワク感だ。慣れればコーナーの入り口から出口、そして減速まで、アクセルペダルひとつで完全に攻略することが出来るし、一旦慣れてしまうと操作がスムースかつシームレスで虜になってしまうこと間違いなし。ちなみに、一般道でも減速特性がチューニングされているため、信号待ちなど、停止までの距離の合わせ込みがしやすくなったのも嬉しいポイントだ。
そして、ワインディングではe-POWER 4WDの恩恵も感じることができた。モーター駆動は一般的な機械式4WDと違い四輪の緻密な制御が可能なので、狙ったとおりのラインを安定してトレースできる。運転していて感じる、リアからのグイっと来る”押し出し感”のおかげで、深いコーナリングも軽く駆け抜けるのが爽快だった。
この日はドライ路面での走行だったが、もちろん四輪駆動だから、突然荒天になっても安心でき頼りがいがある。
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高い走破性が安心感につながる
さらにこの四輪駆動を試したくなって、未舗装路にも足を踏み入れてみた。本格的なオフロードに行くのが趣味でなくても、キャンプ場へのアプローチや秘境温泉、またスキー場へのアクセスなど、レジャーシーンでの悪路は意外にも頻繁に遭遇するものだ。
ここでまずイイなと思った点は、着座位置の高さ。悪路では草が生い茂っていて先が見えにくいシーンも発生する。その点さすがキックス! 見た目はコンパクトでもしっかりと高いヒップポジションが確保され運転しやすかったのは発見だった。
着座位置の高さに加え、無論、走破性能も見た目以上。170mmという余裕の最低地上高も相まって、ちょっとした悪路ならキックスで十二分だ。
ワインディングの時に感じた、四輪駆動の緻密な制御は悪路でもしっかり発揮される。砂の散らばるようなグラベル路でも、四輪がしっかり路面を捉えて信頼感があった。今回は試せなかったが、ぬかるみや泥道などもこれならラクラク攻略できそうだ。
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低ミュー路で実感するe-POWER 4WDの真価
そしていよいよ、トリッキー過ぎるシーンでキックスの走破性を試す。スケートリンクだ。ご存じの通り、スケートリンクだからツルッツルである。磨き上げられた氷の板は、人間の足で立つことすら不安定なくらいだ。
しかし、キックスをはじめとする日産のe-POWER×4WDの組み合わせは、実は雪上や氷上などのグリップの低い低ミュー路とかなり相性がいい。
繰り返しになるが、電気式の四輪駆動は機械式の四輪駆動と異なり、前・後輪それぞれを自在に制御することが可能なのだ。つまり、前輪が滑っても、後輪でアシストできる、といった具合。その制御がモーターで瞬発的に行われるから、動力の伝達にやや時間のかかる機械的な四輪駆動よりも、実は安定したマネジメントができるというわけ。
また、アイスバーンでの制動時、機械的な四輪駆動はブレーキで減速し、最終的にABSにて完全停止を行うが、このABSは緻密な減速コントロールが出来ずクルマがふらついてしまう。しかし、e-POWER×4WDでは、アクセルを戻すと四輪すべてに減速する力が働くため、制動が非常にフラットで安定している。
特にワンペダル感覚の走りでの安定性は顕著で、非常に安心して運転が出来る、というのを筆者は過去のスノードライブで経験していた。
しかし、さすがにここまでツルツルの路面は初めて。ドキドキしながらアクセルを踏んだら、あれ? 意外なほどにしっかりと加速が始まる⁉ そう、なんの引っ掛かりもないようなツルツル路面でも、キックスはスルリと涼しい顔で加速を始めたのだ。
コーナリングの際もゴゴッと横滑り防止機能「VDC」が作動しつつ、その力も借りてしっかりとクルマを曲げていく。率直に言って、想像以上の走破性だったので、ハンドルを握っている私自身が驚いてしまった。
さすがにツルツルすぎて制動もさほど頼りにならないだろうと思いきや、これも目測よりもかなり早めに停止できてビックリ! スケートリンクでコレなのだから、正直、普通の雪道なら全然問題なく走れてしまうこと請け合いだ。
たとえば、日本の雪道で最も危険とされるシャーベット路は、滑りやすい凍った路面の上に溶けた雪が乗り、さらに外気温によって複雑に接地状況が変わるため安定したグリップが難しい。しかし、氷上で発揮してくれたキックスの繊細な四輪駆動制御ならば、この変化をしっかりと電子制御でカバーしてくれるため、脱出性能は高いのではないかと推測させてくれた。
というわけで、様々なシーンでコッテリと試乗をした結論、キックスの見た目以上の性能に驚かされる結果となった。それはつまり、都会風の洒落た見た目だけれど、ナカミはかなりの本格派! さらに、このモーター由来の豊かなトルクをカタログ値19.2km/L(WLTCモード)の燃費で楽しめるのも嬉しい。街ナカから悪路まで、守備範囲の広いキックスの楽しみ方は無限大だ。
レポート:今井優杏 / 写真:篠原晃一 / 編集:橋本隆志(carview!)
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スペック
【 日産 キックス X FOUR 】
全長×全幅×全高=4290×1760×1605mm
ホイールベース=2620mm
車両重量=1480kg
駆動方式=4WD
発電用エンジン=1.2L直列3気筒DOHC
最高出力=60kW(82PS)/6000rpm
最大トルク=103Nm/4800rpm
モーター最高出力=前100kW(136PS)/3410-9697rpm、後50kW(68PS)/4775-10259rpm
モーター最大トルク=前280Nm/0-3410rpm、後100Nm/0-4775rpm
バッテリー=リチウムイオン電池
サスペンション=前:ストラット式
後:トーションビーム式
タイヤサイズ=前後:205/55R17
使用燃料=レギュラーガソリン
WLTCモード燃費=19.2km/L
車両本体価格=326万1500円(税込)
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