エンジン

3.8L V型6気筒VR38型ツインターボ
GT、すなわちグランツーリスモとして、どこまでも心地よく走り続けられる洗練。そしてR、すなわちレーシングテクノロジーが生み出す圧倒的な速さ。GT-Rとは、この2つを究極まで追い続けるスーパースポーツカーである。そのパフォーマンスの中核とも言えるエンジンは、誕生した時点で他を圧倒していた。スペックすべてがR、レースを前提に設計されたエンジンだったからだ。3.8L V型6気筒VR38型ツインターボ。クローズドデッキ構造のシリンダーブロックに、クランクシャフトの支持剛性を大幅に高めるラダーフレーム構造を採用し、強大なトルクに対応。ターボチャージャー、インタークーラー、キャタライザーなどを2個ずつ設け、高出力とレスポンスを両立するインディペンデントインテーク&エキゾーストシステムを搭載。また、オイルパンやロッカーカバーにマグネシウム合金を使い軽量化を実現。グランツーリスモのパワーユニットとしても、レースエンジンのベースとしても、VR38型は非の打ち所のないポテンシャルを備えていた。ここにさらなる進化をもたらしたのは、頂点のレースからのフィードバックだった。GT-Rは市販車をベースとする世界のFIA GT3選手権で闘い、その技術を磨き続けている。そこからNISMOを経てGT-Rに導入されたのは、レース用ターボチャージャーに使われる「アブレダブルシール」を採用した、IHI製ターボチャージャー。ターボチャージャーのコンプレッサーハウジングに樹脂材料を装着し、ハウジングとコンプレッサーブレード間のクリアランスを極小化。吸入した空気の漏れを最小限に保ち、常に最適なクリアランスを維持することで、低回転からのレスポンスをさらに高めたのである。これまでGT-Rは、常にエンジンの効率を高めることで出力・トルクの向上を果たしてきた。GT-RのIHI製のターボチャージャーは、圧倒的な高速域の伸びと中間加速に加えて、アクセルの「ツキ」やパワー感をいっそう進化させ、きわめて洗練されたアクセルレスポンスを手に入れた。最先端のレーステクノロジーは、GT-Rの目指す「究極のドライビングプレジャー」の原動力に他ならないのである。
FUJITSUBO製チタン合金製マフラー
FUJITSUBO製のマフラーは、エンジンの能力を余すことなく引き出す電子制御バルブ付。チタン合金による軽量化とともに、職人が手加工で組み立て、溶接することで美しい仕上がりを実現。快いエキゾースト・サウンドを響かせる。さらに、チタン製のフィニッシャーは、焼き加工によりチタン独特の繊細な青色を再現した。(GT-R Pure editionを除く)。
MOTUL製エンジンオイル(ディーラーオプション)
空冷式オイルクーラーには温度を最適に制御するサーモスタットを設置。ターボチャージャーのオイルを強制的に吸引し、サーキットなど強い旋回Gがかかる状況においても潤滑を保つ。また、エンジンオイルは膜圧保持性、極圧性の高い100%化学合成の「Mobil 1(0W-40)」を指定。サーキット走行頻度の高い方には、NISMO共同開発のMOTUL製エンジンオイルを設定している。

トランスミッション

トランスミッション
GT-Rに「速さ」は不可欠である。しかしそれは、ただひたすら数値を追求することではない。速く走るために最も重要なことは、ドライバーの意のままに走れるクルマであること。そして、ドライバーの意図しない動きをしないクルマであること。我々はそう考えている。例えば市街地の交差点。コーナーの手前でブレーキングし、ステアリングを切り込む。操作しただけ正確に速度が落ち、正確に向きが変わる。何気ない操作にも徹底してリニアで違和感のない走り。「速さ」とは、人とクルマが完璧なまでに一体になった時にこそ生まれるのである。その一体感をいっそう高めるためには、高度なトランスミッションのパフォーマンスが不可欠。目指したのは「もっとコーナリングが愉しめる変速」である。GT-RのGR6型デュアルクラッチトランスミッションは、ドライバーの意思と走行状況に応じ1~6速まで自動変速するアダプティブシフトコントロール(ASC)を採用。直結されたデュアルクラッチにより、ドライバーのアクセル操作に即応した駆動力コントロールを可能としている。さらにGT-Rは、このアダプティブシフトコントロールの自動変速:Aレンジにおける「R」モードのシフトスケジュールを専用設定。走行状況に合わせて動力性能が最適となるギヤを常に選択し、エンジンのパフォーマンスをより引き出すことを可能とした。これによりコーナー進入前のブレーキングで積極的に低いギヤを選択。旋回減速時のアンダーステアを低減し、シャープなコーナー進入を実現。加えて、駆動力レスポンスを高めることで、よりアグレッシブなコーナー加速を可能とした。また、アクセル操作に対する加・減速時のフィーリングも向上。サーキットだけでなく、日常でも、「R」モードの痛快な走りが愉しめるのである。このGR6型デュアルクラッチトランスミッションは、パドルシフトによるマニュアル変速:Mレンジと自動変速:Aレンジが、簡単な操作で切り換え可能。さらに、「R」「NORMAL」「SAVE」の3つのモードをセットアップスイッチで選択することができる。「SAVE」モードではマイルドな変速となり燃費性能や雪道での扱いやすさを実現している。また、プレミアム・ミッドシップパッケージの実現のため、4WDシステムとメカニカルLSDをトランスミッションと一体化して車両後方に搭載。マニュアル変速のMレンジでは、パドルシフト+ボルグワーナー製シックスプレートデュアルクラッチの直結制御+トリプルコーンシンクロナイザーが、ダイレクトで素早い変速レスポンスを実現する。これをコントロールするパドルシフトは、ステアリングホイール固定タイプ。人間工学に基づきストローク量や操作力、クリック感まで検証し、最適化している。高旋回Gがかかる条件下でも安定した潤滑を行うため、トランスミッションオイルをギヤへ直接噴射するドライサンプルブリケーションシステムを採用。フリクションを低減し、動力性能、燃費性能を向上している。
ATTESA E-TS
運転操作や車両挙動をダイレクトに判断するセンサーを備えた、ヨーモーメントコントロールを採用。ステアリングの操舵量を検知する舵角センサー、車両の旋回情報を判断するヨーレートセンサー、Gセンサーなどからの情報を瞬時に分析。ドライバーの思い描くコーナリングラインを予測し、きめ細かく前後トルク配分を制御。あらゆる路面で旋回ライントレース性と加速性を両立させている。

サスペンション・ブレーキ・タイヤ

サスペンションシステム
クルマの中で唯一路面と接しているのはタイヤである。1本につき約ハガキ一枚といわれるタイヤの接地面積だが、それは常に路面と接触しているわけではない。路面の凹凸によるジャンプといった極端な例ではなくとも、タイヤが接地を失う時間は存在する。例えば、ある走行実験でのこと。タイヤの路面追従性検証のため、複数のサスペンションを交換して走行実験を行った。果たしてデータを解析すると、あるサスペンションでは0.1秒、タイヤが路面に接地していない瞬間があることがわかった。わずか0.1秒。だが、200km/hで走行していれば5.5m接地を失っていることとなる。この0.1秒を限りなくゼロにする。それを目指したのがGT-Rのサスペンションシステムである。具体的には、路面追従性の精度を高めるため、細部にわたるサスペンションのチューニングを実施。減衰力特性の変更により、タイヤの接地性をより高めることで、常に最大限のグリップ力を発揮できるようになった。これにより、ステアリングの応答性が向上。
常にクルマからのフィードバックを感じながら、狙ったラインを最小の操舵量で修正舵を当てることなくクリアすることを可能とした。ドライバーが意図しない動きを抑え込むことで、クルマの動きが先読みできるようなリニアで応答性の高い挙動を愉しむことができるのだ。ここで、改めてGT-Rのサスペンションをご紹介しよう。フロントは、パイプ一体構造の高剛性メンバーで支持されたダブルウィッシュボーン式。アライメントの精度を追求するとともに、レーシングカー並みの精度を誇る高精度スプリングも採用。大入力を受けた際にもタイヤの能力を最大限に発揮する。リヤマルチリンク式サスペンションは、燃料タンクのガード機能も持つ、6点マウントの立体型パイプフレーム一体型高剛性メンバーを採用。アルミ製アッパーリンクとロアリンクの一部にピロボールを採用し、大入力時のアライメント変化を最小限に抑えて、接地感を確実に伝達する。さらに、アルミハニカム入りカーボンコンポジット製ストラットサポートバーにより、左右のストラットを強固に接合。サスペンション入力を俊敏に受け止め、操舵に対する反応を向上させている。加えて、セットアップスイッチによって、減衰力を選択できるモード設定型電子制御式のショックアブソーバーBilstein DampTronicを採用。減衰力の電子制御は11種類の車両データから最適に行われ、オールラウンドな「NORMAL」モード、上質な乗り心地の「COMF」モード、スポーツドライビングを愉しむための「R」モードを選択することができる。
ブレーキシステム
ブレーキシステムは、前輪にはØ390mm、後輪はØ380mmの超大径ブレンボ製フルフローティングドリルドローターとスチール系の高剛性パッドを採用。ハードな使用条件でも高い制動性能と安定した耐フェード性能、そして高温時でも優れたコントロール性能を実現した。キャリパーには高剛性と軽量化を両立し、強力な制動力を発揮するフロント対向6ポッド、リヤ対向4ポッドのブレンボ製アルミ製モノブロック(一体構造)を採用した。さらに、GT-R Premium edition T-specとGT-R Track edition engineered by NISMO T-specに専用カーボンセラミックブレーキ(NCCB:Nissan Carbon Ceramic Brake)を標準装備。圧倒的な制動力とコントロール性を発揮する。
高性能ランフラットタイヤ
サーキットでのスポーツ走行まで想定したGT-Rのタイヤには、車重の数倍にもなる慣性荷重を支え、常に安定したグリップ力を発揮することが求められる。そこで構造上サイドウォールが厚く、高い負荷に耐えうるランフラットタイヤ、しかも前後20インチの超大径、大容量タイヤを選択した。専用開発によりランフラット性能を犠牲にすることなく、しなやかなたわみ特性を実現。快適な乗り味をもたらしている。また、スポーツ走行時の内圧の変化を抑制するため、タイヤに窒素ガスを封入。経時抜けによる内圧低下を抑えて、メンテナンス性も高めている。さらに、ブロックに補強部を設けることで横剛性を高め、ステアリングレスポンスの向上とロードノイズの低減を実現。インサートの材質や内部構造を最適化することにより、路面追従性を高めて、優れた操縦安定性の実現や、上質な乗り心地を確保した。また、住友ゴムの新しい加工技術「NanoBlack™(ナノ ブラック)」の採用で、より存在感のあるロゴを表現。空気抵抗低減にも貢献した。