ちょっと丸い、絶妙な四角。デザインの”こだわり”に迫る
キューブの角ばった存在感を強く印象づけた初代キューブの後ろ姿。
キューブはどうして四角い?
日産のコンパクトカーといったらマーチも有名です。1982年10月の登場以降、長く多く親しまれている車だけど実はその丸いフォルムから、女性人気が高い車でした。これに対して、男性でも気軽に乗れるコンパクトカーを、という思いから1998年に「四角い」キューブが誕生しました。
2代目キューブの運転席。よく見るとたくさんの◯を見つけることができます。
実はいろんなところが丸い
それでも、実はキューブが意外と丸いということ、ご存知でした? 四角い車とばかり思われているキューブだけど、ところどころ丸い部分も多いんです。

「キューブは基本的に四角いんだけど、いろんなところが実は丸いんですよ。というのもマーチの部品を使っているからなんです」と、意外な事実を教えてくれたのは2代目キューブのエクステリアをデザインした桑原弘忠。

キューブは、少しでもお手頃に利用してもらいたいという思いから、一部マーチと共用の部品をうまく使用しているんです。
手で触れることでよりはっきりと感じることのできる2代目キューブのやわらかな丸み。
実際に手で触れた感覚がデザインに
「ホイールハウスの部品など実はカーブが結構丸いんです。マーチの部品を使うと丸くなる部分がでてきてしまうんですよ」と、桑原はその苦労を語ります。

さらに、一箇所だけ丸いパーツを使えばいいというわけでもないそうで、一部を丸くするとほかの部分も丸くする必要に迫られるなど、そのデザインは簡単な作業ではなかったようです。そして、桑原はこのように続けます。

「丸さを作るときに、ワーゲンのバスみたいな感じにしたいな、と思って会社の帰りに夜な夜なワーゲンのお店に行って実際に触ってみたんですよね」
なるほど、たしかにワーゲンのバスにも独特の丸みがありますね。実際に手で触れるという作業を経て、桑原にはキューブのためのアイデアが生まれます。こうして、キューブにもやさしい丸みがつけられたというわけです。ちょっとしたカーブひとつにもクリエイターのこだわりが息づいているんですね。
70年代の喫茶店やラウンジをイメージして作られた3代目キューブのシート。
形だけでなく、雰囲気にもやさしさが
ここまではパーツの話でしたが、その「丸さ」はキューブという車の雰囲気にまで繋がっています。3代目のインテリアを担当した早川忠将はデザインするにあたって、意外なものを想起したそうです。

「実は、デザインをするときに中学生の頃に初めて入った喫茶店をふと思い出したんです。実家の西荻窪にあった、ヒッピーくずれみたいな人がマスターをやっていたちょっとすえた感じのする、まぁ70年代後半の当時はどこにでもあった感じの喫茶店なんですけど」

クールで近代的なイメージもあるキューブのデザインイメージの中に「70年代の喫茶店」があったとは驚きですね。
「そんなことをモヤっと考えている時に、カラーデザイナーからクラッシュベロアをシートに張るアイデアが出たんです。そういえばあの昭和な喫茶店の丸椅子も赤い別珍張ってあったなぁ、そんな『ウォーム』で『ちょっと懐かしい』感じを入れたら、もしかしたら新しい感じになるかもね、という話になったんです」

確かにキューブの座席は、喫茶店やラウンジのようなゆったりとした空間。やわらかなこの雰囲気もキューブの魅力の一つといえます。そのフォルムも空間も、ぜひあらためて注目してみてください。

キューブだけど実は丸い。そんなポイントをたくさん発見できるはずです。