【にっちゃんレポート】
DATSUN フェアレディ240Z
再生プロジェクト VOL.1

2013年12月1日(日)、約40年の時を超えて「世界最速」と呼ばれたクルマが、その走りが蘇る。
その名は「DATSUN フェアレディ240Z」。1971年のサファリラリー優勝車として世界を魅了した名車の再生活動を、
にっちゃんは1年間追い続けました。そこには、クルマを愛してやまない社員たちの姿がありました。

「日産には名車を再生するクラブがある」

2013年3月、にっちゃんで紹介した「名車再生クラブ」。彼らは、シルビア ニッサン240RSやスカイラインGT(S54A-1)など、かつて国内外の大会で活躍した数々の名車を再生(レストア)してきた技術者集団です。

しかも、所属メンバーは業務外の時間に集まり、自主的にレストアを実施。いわゆる社内のクラブ活動ですが、その活動は本格的。2006年の発足以来、ほぼ毎週活動を続けており、今やメンバーは80人以上。日産が主催するパレードやレース場のイベントなどでも、彼らが手がけたヘリテージカーがよく登場します。

その活動の根幹は「日産がこれまで製造してきた名車たちをただ展示するだけでなく、クルマとしてもっとも魅力のある、しっかりと走る状態で保存したい。そのレストア活動を通じて、製造当時の最高レベルの技術を学びたい」という情熱。そんな想いをもった名車再生クラブが今年手がけたのが、1971年のサファリラリー優勝車「DATSUN フェアレディ240Z」のレストアでした。

再生の第一歩は「見る」こと ー現車確認会ー

名車再生クラブが行うレストア活動の流れは大きく分けて4工程。「現車確認」「車両分解」「修復・部品磨き・組み上げ」「試走」という流れで行われます。今回のレストアもいつも通り、まずは今のクルマの状態を見る「現車確認会」からスタートしました。

場所は、神奈川県にある日産ヘリテージコレクション。この日集まった約15名は創設からクラブを支えているコアメンバーで、それぞれがブレーキ、エンジン、電気系統、空調などの専門家。今後のレストア時には、各パートの作業リーダーとして他のメンバーをまとめていく現場監督たちです。

別室で本年度の活動スケジュールと事前情報を共有したあとは、いよいよDATSUN フェアレディ240Zとご対面の場へ。倉庫内のピットで待っていた240Zを見るやいなや、どんどん車体をチェックしていきます。ある者はボンネットを開け、あるものはダッシュボード下をライトで確認。文字通り、隅から隅まで確認し、どこを直す必要があるのかを次々と洗い出していきます。

今回の確認では、謎の「助手席パネルの時計跡」「サイズが合わないジャッキ」も発見。当時のことを思い描き、頭を悩ますのも醍醐味のひとつ。

DATSUN フェアレディ240Zの現車確認状況

  • ・ギアやベアリングが固着していて、車輪が動かない
  • ・内装のクリーニングは必須
  • ・タイヤは交換。ただし、現物がない
  • ・エンジンはノーマルのものに変わっている
  • ・ハーネスはそのまま使えそう
  • ・助手席パネルの時計跡については継続調査

レストア全般を指揮する総監督:磯部

お客様にとって、そのクルマがもっとも印象に残っている瞬間は違っています。レーシングカーであればサーキットでスタートするとき、ラリーカーであればゴールに辿り着いたときなどです。その瞬間を再生するのが、このクラブが行うレストアの完成形です。今回の240Zではフロント部分の凹みなどは、そのまま残しておきます。当時の状態をいかに残すかが我々のテーマです。
それと、一度レストアしたら30年は走れるようにとしっかりと直しています。やっぱりクルマは走っているところが一番かっこいいので。

バッテリーハーネスなど電装系スペシャリスト:渡邉

今回の240Zは、一度走れる状態にしていることもあり、クルマの電気系の状態は悪くないです。ラリーカーは手作りされている部品が多いので、既存パーツがないケースもよくあります。以前レストアしたシルビア ニッサン240RS(BS110)のときには、全部のハーネスを手作りでつくりなおしました。あれは正直きつかった(笑)。はじめてのレストアでしたし。その分、完成したときの喜びも大きかったですね。

砂漠の王者「DATSUN フェアレディ240Z」の復活へ ーキックオフ会ー

現車確認会のあと、240Zは神奈川県厚木市の日産テクニカルセンターへ。レストア開始に向けて、クラブメンバーを集めた「キックオフ会」が開かれました。
司会を努めた磯部からは「日産は始業当時からスポーツカーを作り続けています。創立80周年を迎える今年、私たちのクラブでもスポーツカーの代表作のひとつ、DATSUN フェアレディ240Zを再生し、当時から続く"技術の日産"としてのチカラを世の中に伝えたい」という言葉も。

また、この日は240Zのラリー車としての設計を担当した日産OB 野口隆彌氏も参加。貴重なレース中の写真やエピソードなどを交えながら、当時の開発背景やラリーの様子を説明していただきました。
最後は、メンバー一同集まって記念撮影。いよいよ、次はレストア作業のスタートです。

キックオフ会により、クルマを知り、再生がはじまる:太田

再生するに当たり、そのクルマの歴史や当時の技術者が込めた思いを知ることで、どんな工夫をしてるのか?構造は・・・?など、「ワクワク感」や「やる気」、「興味」が生まれます。皆さんの気持ちが高まるようにキックオフ会を開催しています。
そして、いざレストアへ!と進みます。240ZはDATSUNの名を世界にとどろかせた名車です。1971年サファリラリーのゴール直後の状態に思いを込めてレストアしたいと思います。

コラム:過去のレストア車紹介

[2006年再生] ニッサン シルビア 240RS(BS110)

1983年のモンテカルロラリー仕様車。名車再生クラブとして、最初に手がけたクルマ。戦歴のある車両が存在しないので、ラリーカーとして作られた完成状態を、同じ仕様で作製した正真正銘のワークスカー。
「一発目から凝りすぎた」と皆が言うほど、当時の手作り部品に至るまで徹底して作製しています。不足部品を探すために全国を駆けずり回ったり、内部の電装系をすべて手作業で作り上げたり、右ハンドル用の部品を左ハンドルに合わせて全部作り直したりと、初期のクラブメンバーにとってはもっとも思い出深い1台です。