


大学時代は、ずっと自動車屋になることしか考えていませんでした。ただ、卒業する年に自動車会社の募集がなく、1年半ほど建設会社で働きました。コンクリートのこともよく知らなかったのですが、やるからには効率を上げて仕事をしたいということで、セメントを自動的にコンクリートにするバッチャーブラント、当時日本になかったコンクリートミキサー車を開発しました。そこへ、たま自動車(後のプリンス自動車工業)から「設計屋」が欲しいという話が舞い込んだんです。


私のクルマ作りの偉大な教科書は、自然の摂理。スカイラインの開発では、いつも自然の教えを受けとめ、それに挑戦してきました。4本足の生き物は、後ろ足が太く、前足が細い。だから、私は後輪駆動にこだわっているんです。例えば、7代目スカイラインで採用した四輪操舵システム「HICAS(ハイキャス)」は、競馬場でコーナーを駆け抜ける馬の足運びが発想の原点です。後ろ足で蹴って前足で操舵するという自然の教えに従うことで、安定した走りを実現しました。


3代目スカイラインの2ドアハードトップが一番好きですね。いまでも「欲しい」と思います。運動性能を考えてギリギリまでホイールベースを詰めたのが2ドアハードトップでした。スカイラインの開発では常に運動性能を第一に考えていましたが、 生産設備まで踏み込んで思い切った開発をしたモデルだけに、印象が強いですね。


3代目スカイラインで開発したトランクオープナーは、単純に私が雨に濡れたくなかったから。雨のなかゴルフに出かけた帰りに、助手席と後席に乗った部下を家に送り届けるたびに、キーを抜いてトランクを開けての繰り返し。自分の家に着く頃には全身びしょ濡れで、「これは割に合わない!」と思ったのがきっかけです。周囲が「技術的に不可能」と受け付けてくれないので、自分で設計したら、できちゃったんです(笑)。


私がスカイラインの開発に携わっていたときは、車両サイズとエンジンの排気量にこだわりました。コンパクトな車体に小排気量で高性能なエンジンを組み合わせることも、環境への配慮につながります。忘れてほしくないのは、設計の中心はあくまでドライバーであるということです。環境・安全も含めて、自動車技術は、ドライバーの気持ちについていくような存在であってほしいと願っています。


自分がイメージしたとおりに走ってくれる。それも、歯をむき出して噛み付くようなクルマではなく、秘めた力を持っている。そして、あくまでもドライバーを重視した設計であること。それがスカイラインの原点だとすれば、新型スカイラインはスタイルにしても走りにしても、原点に回帰した感じがします。


私が関わったスカイラインすべてに共通して言えるのは、他のマネをしていないということ。日産の開発者には、いつも技術に純粋であってほしい。ひとたび自分が作りたいと思ったのなら、周囲の反対を押し切るくらいの熱意でクルマ作りに取り組んでいってほしいですね。ちょっとやそっとじゃ動かないような夢を持ち続けてほしい。いま以上に愛“車”精神のあるクルマ作りを期待しています。
