やんばるの森

【ANAグループ機内誌「翼の王国」2018年3月号にタイアップ広告掲載】

アップダウンの道で、ヤンバルクイナと遭遇

沖縄本島の北部、やんばるの森を歩いてみたい。そんな計画を立て、国頭村に宿を取った。夕方から降りはじめた雨は朝にやみ、ホテル周辺に靄(もや)がかかる。「こんな朝はヤンバルクイナが現れるかも」。宿の主人の言葉で予期せぬ期待が湧き上がる。 空港で借りたクルマをスタートさせる。目的地は沖縄本島でもっとも大きい滝、比地大滝。そこまで約1.5キロのトレッキングコースがあるらしい。宿からトレッキングコース入口までの道はアップダウンが多くクネクネと曲がるが、アクセルペダルだけで加減速を操作しながら快適に進む。上り道での加速も気持ちいい。刹那、前方の道路脇に小さな黒い物体が動いているのが見えた。まさか。減速すると、真っ赤なくちばしと足が目に入った。ヤンバルクイナだ! やんばるの固有種であり、天然記念物でもある。そう気づいた時には素早く走って脇の茂みへと消えていった。ほんの一瞬ではあるが、野生のヤンバルクイナを見られたことに興奮した。

雨上がり、ヒカゲヘゴの並木を走る。やんばるの木漏れ日はひと味違う。

比地大滝へのトレッキングコースの入口に着くと、ガイドのカール大城さんが迎えてくれた。カールという名前は自分で付けた愛称で、本名は馨(かおる)さん。「親しみが湧いて呼びやすいでしょ」と、いたずらっぽい笑みを浮かべる。比地川に沿うトレッキングコースに入ると、そこは深い森。雨露で潤った植物たちが圧倒的な生命力で迫ってくる。耳をすますと、風が樹木を揺らし葉擦れの音が聞こえる。まるでこの森を演出する間奏(インタールード)のようだ。

上/ガイドの“カールさん”(右) が鳥の居場所を教えてくれた。 中央右/日本でいちばん大きなどんぐり、オキナワウラジロガシ。 中央左/天然記念物のホントウアカヒゲ。 下/シダ植物のヒカゲヘゴの芽。ヒカゲヘゴは、大きいものは15メートルほどにもなるそう。

奄美大島から沖縄諸島に至る琉球地域には、約1760種類もの植物が生息しているが、そのうちの約1250種類がやんばるの森にあるという。樹木のうち多くは照葉樹のスダジイで、モコモコと密集して生える様子からブロッコリーの森と呼ばれるそう。
さらに耳を凝らすと、今までに聞いたことがない野鳥のさえずりが森の中に響き渡っているのに気づく。なかでも、ひときわ高く目立つ声がする。カールさんはその声の主を探している。天然記念物のホントウアカヒゲだ。森の水先案内人と呼ばれるアカヒゲのさえずりにはいくつかのバリエーションがあり、七色の鳴き声を持つという。他にも、ノグチゲラやカラスバトなどの珍しい鳥が思い思いに声を上げている。「意外とせわしないでしょ?」。
カールさんが呟いた。確かに、この森の声は都会のネオンに匹敵するほどの情報量で身体を包み込んできた。

樹木、野鳥、水の贅沢なアンサンブル

スタート地点では穏やかに澄んでいた比地川の流れも、コースの中盤を越えると徐々に勢いがつきはじめ、水の流れのリズムを奏でる。樹木、野鳥、水という贅沢なアンサンブルが鳴り響くなか、奥から地鳴りのような音が聴こえてくる。滝の音だ。細い道を上り切ると、視界が開けて滝が現れた。
そこではもう、滝からの音しか聞こえない。滝がもたらす水流は、この森の生命の源。すべての音をかき消すダイナミックな大地の鼓動。そして、自分の心臓がいつもより強く脈打っているのを感じる。耳で感じたやんばるの森に、少しだけ同化できたような気がした。

上/比地大滝の落差は約26メートルで、沖縄本島最大。
下/初めて見るヤンバルクイナは、美しく素早かった(「安田くいなふれあい公園」内にある『ヤンバルクイナ生態展示学習施設 クイナの森』にて)。

日産NOTE e-POWER

このクルマでドライブしました。

今回のやんばる取材では、今コンパクトカー人気No.1の日産ノートe-POWERに乗って旅をしました。
e-POWERの100%モーター駆動ならではのスムーズな出足に加え、アクセルペダル操作だけで減速できる新感覚の運転体験も相まって、初めてのやんばるの山道でもストレスなく、旅を満喫できました。燃費がよく環境負荷が少ないのも、大自然を走るうえでは大切なポイントです。

やんばる取材で出会った人たち

この日の「まかちくみそーれランチ」(980円)。じゅうしぃ(沖縄の炊き込みご飯)が印象的なおいしさでした。

金城笑子さん

国道58号線沿い、国頭村の南の大宜味村にある『笑味の店』の店主・金城さんは、昔からおじぃ、おばぁが食べてきた食材を使って元気がでる食事を供しています。この日は、“おまかせランチ”という意味の「まかちくみそーれランチ」 (980円)をいただきました。モーイードーフ(海藻の一種「いばらのり」を使った豆腐)や、タピオカアンダギーなど、ここでしか食べられないもののオン パレード。「サータアンダギー、緑色っぽかったですけど、何が入ってるんですか?」「カラギ(琉球シナモン)よ。いつもお茶にしているんだけど、サータアンダギーに入れてもおいしいね」。どうりで滋味深いわけです。

笑味の店
沖縄県国頭郡大宜味村字大兼久61
tel.0980-44-3220
http://eminomise.com/

キョンキョンは、エサの時間になると猛烈なダッシュを見せてくれました。

宮里ふみよさん

野生ではなかなか見ることのできないヤンバルクイナを、「いつでも見られる」状態で展示している「安田(あだ)くいなふれあい公園」内にある『ヤンバルクイナ生態展示学習施設 クイナの森』。そこの解説員の宮里さんは、展示されているメスのキョンキョン(6歳)について語らせたら止まりません。「飛べないクイナで世界の一番北に棲んでいるのがヤンバルクイナです。キョンキョンは、70羽以上の中から選ばれた“スーパーモデル”なんですよ」。アクリルを隔てて至近距離でヤンバルクイナを見られるだけにリピーターも多く、東京から10回以上通って来る方もいるとのこと。「タイミングが合えば、可愛い水浴び姿が見られます」と、楽しげに教えてくれました。

ヤンバルクイナ生態展示学習施設 クイナの森
沖縄県国頭郡国頭村安田1477-35
tel.0980-41-7788
http://kuinapark.com/kuina

「ブダイの丸ごとロースト」(800円)。青々としたイラブチャー(ブダイ)がこんなにおいしいとは!

宇良宗明さん

国頭村の辺土名(へんとな)にある料理店『びすとろ海畑(うみばる)』のオーナーシェフ。国頭村に生まれ育って、小中高とすべて地元の学校という宇良さんは、地元の有名ホテルのシェフとして鍛えてきた腕前で、出てくる料理はすべて唸るものばかり。「ミーバイのさしみと島ダコのスモーク」や「ブダイの丸ごとロースト」など、地域の食材を使いつつビストロ風にアレンジして供してくれる料理はどれも絶品。辺土名成人会のメンバーとして新春駅伝大会の運営にも携わる、地元期待の星です。

びすとろ海畑(うみばる)
沖縄県国頭郡国頭村辺土名113
tel.0980-41-2325

共同店は、コンビニのない集落のコンビニの役割を果たしています。

神山加代子さん

国道58号線からやんばる西側の安田(あだ)地区へと抜ける与那安田横断道路の入り口が与那地区。そこにある『与那共同店』で店頭に立っていた神山さんは、店を任されて4年目になります。共同店とは、集落の地域住民の共同出資・共同運営により運営されている沖縄ならではの売店のこと。与那共同店は地域の人たちの憩いの場で、毎日のように集落の人が集まってきます。そうなると神山さんはただの「店員さん」ではなく、ポークたまごを作る料理人になったりして大忙しとか。「おじぃ、おばぁのクリスマス会コンサートとかもやってるのよ」。

与那共同店
沖縄県国頭村字与那81
tel.0980-41-2287